奇をてらうことなく、地に足をつけて、ありふれた日常の中から人情の機微を掬い取るようにして小説を紡いでいたと評される宇江佐真理センセの未完の作品です。 町奉行所の役人だった夫がポックリと逝き、それまでひとり思い描いていたひとり暮らしをはじめたのは良いものの、穏やかな日を送る暇もなく日々何かの騒動に巻き込まれて追い続ける主人公「うめ婆」を書き綴ったものです。 残念ながら、完結に限りなく近いところで途切れてしまっている。 闘病生活の中、連載途中であったものの書き続けることができなくなったのだろう。 いろんな作家の方の書籍を読んでいると、執筆途中でお亡くなりになられた方の作品に出逢う事がある。 好きになって読み続けていた方の作品が未完のままで出版されるのは、一行でも良いから読みたい読者としては非常に喜ばしい部分もある。 しかし終わりまで読み終えないうちに途切れてしまった最後の一文字を見た瞬間、悲しみや悔しさが覆い被さってくる。 その方の新作を永遠に読めないと言う事だけでなく、最後まで書ききれなかった作者の想い、いや私自身最後まで永遠に結末を読むことのできないということに悶々とするのだと思う。
時々思ったことをツラツラと綴ってたりしてます…