2006年に単行本が刊行され、本書はそのシリーズ第4弾であり完結編となる。
ヤクザな内容でありながら、町医と記されていることから当時の医療に関する事情について調べ上げ、それがまたも惜しげもなく盛り込まれている。
江戸時代から幕末にかけて、海外の優れた医療技術である蘭方が流れ込んできたことは、小中学校で習う歴史でも習うが、内科に関しては、漢方の方がこれまで蓄積されてきた見立てや治療実績の高さから優れていたのではないかとも記されている。
後年、技術が進み、いわゆる蘭方に追い抜かれることにはなるが、現代医療の中でも身体への負担が少ないことなどから、実績のある漢方が見直され用いられることも増えている。
まぁ、本書を通じてそんなことがスッと頭の片隅に入り込んでくる。
この先生の作品はどれも、そのように知らず知らずのうちに作者が調べ上げた知識が惜しげもなく作中に盛り込まれ、それが読者に抵抗なく入り込む凄さがある。
まだ読んでいない作品がいくつもあるが、先生は既にお亡くなりになられているため、残りも大切に読んでいきたい。
年を跨いで、また良作をひとつ読み終えてしまうのは、嬉しいやら寂しいやら。