写楽を題材、主人公にした作品かと思いきや、写楽が描く画を中心に、同じ時代に活躍した読本や黄表紙の書き手、そして絵師と蔦屋重三郎の心の世界を描いた逸品です。
写楽が絡むとミステリーと捉える方も多いようですし、巻末の解説の方もそう捉えていらっしゃいました。
しかし私は、彼等が生きた時代とその時代を背負って彼等が生み出した優れた作品、そしてこれらを生み出す中で抱え噴き出す心の塊と交差が深く描かれた作品ではないかと思いました。
読み始めてすぐ、この作品はどこに向かっていくのだろう。この作品は誰が書いたんだっけ?
そう思い始めた頃、宇江佐さんの世界観が広がりだします。
実はこの作品を半分程度まで読んだ頃、たまたまTVで別の方の映像作品を目にしたため、この作品を早く読み終わってそちらの原作を読まなければ、そんなふうにも考えていたのです。
しかし後半から終盤に向かうにつれ、作品の中に「どっぷり」と浸かって抜け出せなくなっていた自分がいました。
まぁ、面白いと感じるところは人それぞれですので…。