この方の船旅付きは筋金入りだと思える一作です。
といっても、この作品だけを読んでいると何のことやらと思われると思います。
佐伯作品には、江戸時代と言われるその頃に国を跨いだ船旅を題材にしたり作品の中に織り込んだモノが数多くあるのです。
現代社会では飛行機どころかWeb、そしてVRなどの世界で自分がその場に行かずとも世界中を視覚的・聴覚的な面で体験することができます。
しかし電話どころか電気すらなかったこの頃、日本以外の世界を知るには船旅しかなかったのですから、憧れを抱くのは当たり前かと思っていると現代社会でもそうでもなさそう。
というのも、自分の目の前しか見ていないヒトが多いからなのではないかと思っています。
今の自分の生活とその目の前に置かれている状況で手いっぱいなだけでなく、そもそも育った環境もそれでヨシとしてきたので他の世界を知る由もない。
想像力や創造力は自然に生まれてくる部分もあれば、ある程度素地がないと何も浮かばないと思うと、現在の日本社会はそんな状況になりつつあるのではないのではと思ったりもします。
ITの世界を通じて何かを知ることができても、それが現実のものなのかそうでないのかの判別もつかず、ただ生きている日本人に先はない気がするのですけどねぇ。