2014年に刊行され、2020年に文庫化された宇江佐真理先生の逸品。
江戸の下町で貧しいながらも懸命に暮生きる、長屋の住人の日常を描いたものです。
読み進めていくうちに、どこか心あたたまるストーリーに仕上がってるのは、この先生の作品の特徴です。
現代を基軸にして生きている今の人間が、当時の生活を想像して描いているわけですから当たり前っちゃ当たり前なのかもしれませんが、この作品に限らず、姿勢に生きる人々を描いた作品を読んでいると、実は当時の人間と、現代の人間の生きていく上での考え方って、全く成長していないのではないかと思えてしまいますから不思議です。
特にある一定以下の景色しか見えない、いや見ることのない人々からすると、各国の中枢で考え、そして行われていることや、世界中で起きていることを想像して理解し、自分の中で昇華(消化)させるのは難しいのではないかと思うことがあります。
あぁ、だから巷(特に今の時代はSNS)を見ると、こんなことが当たり前のように理解できず、くだらないことを喚き叫ぶ人が多いのか、などとも思ってしまいます。
勿体無いなぁ、せっかく現代に生きているのであれば、もっと視界を広げて生きていけるのに、なぜそうしないのだろう、そう思うことが多いのですが、人によって、いやその人がそれまで生きてきた中で、経験できた中で理解し昇華(消化)できる何かが違うのだと思います。
かくいう私も、大したことは経験していませんし、たいそうなことを考えて生きているワケではないですけど、ああいた生き様にはなりたくはないですねぇ。