本書は、1998年8月に刊行された検死と探索を題材にした作品である。
2001年9月には単行本が出版され、2007年には16刷が発行されたところから見ると、かなり売れた作品ではないかと思われる。
そりゃそうだ、宇江佐真理センセの作品ですから。
新井白石や平賀源内が生きていた当時(江戸時代)の記録に、検死のために医者が同行したと記されているような記録はないとのことだが、もしかするとこの作品のように、医者が同行したこともあったのではないか、そうあってもおかしくはないと思うくらい、当時の役人による検死記録は詳細に残っていたりするらしい。
そんなことはイイとして、この作品は面白く書かれている中に、人の生から死までを通し、かなり考えさせられると思わされる記述が多い。
単なる小説じゃん、といえばそれまでだが、人が生まれるまで、そして死を通じて、色々思わない方がおかしいのではないかと思う。
当時とは違い、今はかなり医療が発達してはいるが、その医療を受けられない人が数多くいる日本の現状に、なんとなく当時の暮らしと今の日本になんら違いはないのではないかと思わされてしまう。