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宇江佐真理 著 うめ婆行状記

  奇をてらうことなく、地に足をつけて、ありふれた日常の中から人情の機微を掬い取るようにして小説を紡いでいたと評される宇江佐真理センセの未完の作品です。 町奉行所の役人だった夫がポックリと逝き、それまでひとり思い描いていたひとり暮らしをはじめたのは良いものの、穏やかな日を送る暇もなく日々何かの騒動に巻き込まれて追い続ける主人公「うめ婆」を書き綴ったものです。 残念ながら、完結に限りなく近いところで途切れてしまっている。 闘病生活の中、連載途中であったものの書き続けることができなくなったのだろう。 いろんな作家の方の書籍を読んでいると、執筆途中でお亡くなりになられた方の作品に出逢う事がある。 好きになって読み続けていた方の作品が未完のままで出版されるのは、一行でも良いから読みたい読者としては非常に喜ばしい部分もある。 しかし終わりまで読み終えないうちに途切れてしまった最後の一文字を見た瞬間、悲しみや悔しさが覆い被さってくる。 その方の新作を永遠に読めないと言う事だけでなく、最後まで書ききれなかった作者の想い、いや私自身最後まで永遠に結末を読むことのできないということに悶々とするのだと思う。

上田秀人 著 勘定侍 柳生真剣勝負(四)

 柳生の殿様が手をつけた女性の子供は超一流の大阪商人に育った。 柳生家が大名になったは良いが、金勘定ができず借金まみれの侍世帯を立て直すべく無理やり呼び出された主人公「一夜」が活躍する物語。 この方の物語に出てくる登場人物は、どれもハラがあって怖い…読む人によっては人嫌いになりそうな気がします。 しかし都会に生まれ育ちそれが当たり前の方、または田舎から転勤で都会に出てきて他人を押し除けてまで出世したいというような人物を見ていると、今も昔も人の考えることは同じだな、そんな感じがするのは気のせいでしょうか。 その辺りを割り切って、またそのような作品なのだと分かってくると面白い作品です。 決して悪い意味ではなく、作品としてはとても面白いという意味で。

佐伯泰英 著 一人二役 吉原裏同心 38

  2022年10月、ようやく発売された吉原裏同心の最新刊です。 シリーズ開始当初は裏同心として活躍した主人公も、吉原の元締めのような立場になってしまい四苦八苦しているところは、どこかサラリーマンのシリーズ物のアレを思い起こさせてしまいます。まあ、その姿も現代のサラリーマンにはウケるのかもしれませんが、斜めに構えてしまう私は「やはりナカの人材ではダメなのか」などと思ってしまったり... 他の作品はどれも完結したり、終わりに向けて走り出しているのに、この作品だけは佐伯センセの身体が動かなくなるまで書いていくぞ?!的な感じを受けますが、もしかするとこの作品を中心に、他は短編や読切になっていくのかも... 作品自体はとても面白いと思っていますが、楽しむだけの目を持たなくなってしまった自分に若干の苛立ちを覚える今日この頃です。

宇江佐真理 著 桜花(さくら)を見た

  北海道出身・在住だった宇江佐真理先生の作品です。 すでにお亡くなりになられていますが、残された作品はどれも面白いだけでなく、どこかに故郷である北海道を散りばめて慈愛に満ち溢れる作品ばかりです。 この作品は短編集ではありますが、どれも面白いものばかりで、その多くは当時の文化や故郷の歴史を紡いだものですが、史実をベースにしているにしてもその創作力は凄いの一言に尽きます。 葛飾北斎の娘、お栄を題材にした「酔いもせず」は他にも幾人かこの方を中心に書いた作品がありますが、その心情が生々しく描かれており創作とはいうものの、惹き込まれます。 松前藩の歴史を紡いだものもあり、その中に蠣崎将監広年の視点を中心に記された物語があります。この頃の松前藩を題材にした作品は、数多くの小説家により取り上げられており、それぞれの作家による視点で記されています。私の知る非常に狭い範囲ではありますが、蠣崎将監広年という人物像に関しては皆さん松前への帰藩に関し自身の描いた絵を通じて尽力された方という点、それで尚且つ好人物であるという点が共通しているようです。 その他、この短編集の冒頭につは遠山の金さんが放蕩していた際にできた息子を描いた作品があります。 いやどれもみな人の心にある慈愛や希望、そして葛藤が巧みに表現されており、短編とは思えない重さが感じられます。 巻末は、蠣崎将監広年が生きた同じ頃の松前を別の人物の視点から記した作品、シクシビリカ。 これは同じ時代を生きた冒険家である最上徳内の目を通した物語です。描かれる人の視点によって、さまざまな角度からだけでなくその時代の事情や愛憎、希望などを描く宇江佐真理先生はやはり凄い方です。 もっと長く生きて素敵な作品を世に送り出していただきたかったですねぇ。

佐藤雅美 著 官僚川路聖謨の生涯

  幕末の数十年に生きた官僚の生き様を描いた逸品です。 作者が描いた通りの人物であれば、官僚の鏡なのでしょうが、サラリーマンとしてもそうなのかもしれません。 確かに真面目で正直な方だとは思いますが、そのことが組織に仕える者として本当に良いのかというと、若干の疑問を感じます。 上司に恵まれたのかそうでなかったのか、その点で見ると出世という面では真面目だからこそ出世されたのだと思いますが、上司には恵まれなかったのではないかと思います。 昔も今も、上司となる人間は優れているらというよりも「狡賢い」人間が多いように思えます。自分の周囲しかわかりませんが、日本の組織を見ているとそう感じざるを得ません。 しかし自分で起業される方はまた別の面を持ち合わせていらっしゃるので、これには全てが含まれるわけではないような気もします。 ただまぁ、物語としては逸品と言えると思いますし、宮仕えする身としては非常に参考になるのではないかと(笑)。 いや本当に面白かったです。

藤原緋沙子 著 隅田川御用日記 雁もどる

  隅田川御用帳シリーズの新シリーズとして出されてきたようですので、早速拝読いたしました。 白河藩士となり橘屋の主でもある塙十四郎とお登勢の間に子供が産まれ、幸せに暮らしているというところからして、安心して読み進められる物語ですねぇ。 推しの作家さんが皆高齢の域に達している方ばかりですし、中にはお亡くなりになられた方も... この物語も長く続くと良いですねぇ。 そんなことを思いつつ、これからも推しの作家さんを探す読書の旅を続けていきたいです。

佐藤雅美 著 敵討ちか主殺しか 物書同心居眠り紋蔵

  2019年7月に死去された佐藤雅美センセの、シリーズ最後の作品ではないかと思います 多分、このシリーズは続編が途中まで執筆されていたとしてもどなたか熱烈なファンが引き継いで最後まで仕上げられ、それが発刊されるような事はないと思います。あるとそれはそれで面白いのでしょうけど そう書くと、ナンだか私が某センセの遺作を馬鹿にしているように取れなくもないのですが、そんなことはありません 佐藤雅美作品は、作者がどのように調べられたのかは分かりませんが、よくこんなモンこんなところまで調べて作中に織り込めるモンだなぁ…と言うようなところまで遡って、それが今目の前で起きているかのように、それも時と場合によっては面白おかしく織り込まれていたりします しかし喜劇作品は脚色されていてもなお、その時代背景はかなり正確に書かれているので面白くもあるけれど知らず知らずのうちに勉強にもなります 某センセの方はというと、こちらもかなり下調べが行われた上で執筆されてはいるのですが、そこで表現される方法が違います 時代背景やジャンルが違うという点だけでは語れないような気がしますが、このあたりはどちらも読んだことがある方でなければ感じられないのではないかと だから読むコトは楽しいしやめられないんですよねぇ