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佐伯泰英 著 独り立ち 吉原裏同心(37)

  シリーズ名が「吉原裏同心」から「吉原裏同心抄」そして「新・吉原裏同心抄」となり、再度「吉原裏同心」と戻ってきた珍しい経緯を辿るシリーズ作品です。

2014年には某国営放送の木曜劇場で12回シリーズとして放送されたそうですが、当時でもこの作品が12回で収まり切れるとは思いませんし、キャストを見てもとても面白い内容に改変できたとも思えませんので、打ち切りになったのではないかと推測されます。

私が初めて佐伯作品に出会ったのも、この吉原裏同心でした。
この作品を皮切りに、この方の作品を追い続けていますが、この方の作品は時代背景を活かしつつも創作が凄い、その一言に尽きます。
私が知る中では、この方の作風の対局にあるのが上田秀人先生ではないかと思っています。
上田先生も時代背景をしっかり掴んだ上で作品を練り上げて行かれていますが、そこに書かれているのは人の心の闇と妬みがベースになっていると感じています。
それに対し佐伯作品はこのシリーズだけでなく、全ての作品に通じて人の心の闇と共に、それを上回る清々しさが描かれていると思います。
そう言う意味で、上田作品も佐伯作品も田舎育ちの薄ボンヤリした育ちの私には非常に助けになります。これも対局的な意味で。

さて、それがどのように自信に働くのか知りたい方は、このお二人の先生方だけでなく、色んな方の作品に触れて自分の心にどう触れられてくるのか、叩きつけられるモノなのか、それとも優しく包んでくれるモノなのか体験してみるしかないと思います。
ただ、こう言った体験は小説に限ったことではなく、映像作品も同じではないかと思います。
無闇矢鱈に数多く触れていくのも一つの手ですが、自分の目で、頭で、カラダで感じて選んで養うしかないと思います。

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