2001年に書籍化され、2010年に文庫化された逸品です。
時代は文久二年から慶応四年(明治元年)までの七年間と言う、多くの人の思惑と生命と引き換えに、日本が大きく揺れ動いた頃に生きた人々の物語です。
この世に新選組を題材にした作品は数多くありますが、彼等を主にした物語ではなく、彼等を客観的に見ながら大きく変わっていく時代と京の街と共に生きていく主人公の目を通したものが面白さを増しているのではないかと思います。
忘れっぽい私の頭の片隅にも、同じ時代を生きた別の方の視点から、その主人公の目を通して描いた作品があった記憶がうっすらとあります。
確かこれを書かれた方も同じ女性作家の宇江佐真理先生でしたねぇ。この作品もかなりの秀作でした。
私の偏った感想ですが、このお二人の女性作家による視点の鋭さと言うかなんというか、本当に面白いです。
誰もが知るあの池波正太郎先生や私の推しの一人でもある佐伯泰英先生もそうですが、男性作家は「これ」と思う主人公を描くと主人公を中心に浮かび上がらせて描かれた作品になるのです。
しかし前述お二人の女性が書くと、やはり主人公が描かれてはいるのだけれど、描かれている視点・視覚が全く違うのです。
これって凄い事なんじゃないかと思うんですけどねぇ…